- 作成日:2007-08-11 21:27:46 (中原 雄一) | 更新日:2007-08-11 21:27:46 (中原 雄一)
私は月刊の自転車雑誌を3冊毎月購入していて、そのほかにも定期的に刊行される雑誌をほぼ欠かさず購入しています。
その結果、毎年必ずといっていいほど「自転車でダイエット」というような記事を見かけることになります。ダイエットというのは本来「目的を達成するための食事」を表す用語ですから、「自転車でダイエット」というのはヘンな表現だと未だに違和感を感じますが、私が監修する雑誌などでも私の「減量」という言葉は「ダイエット」という言葉に置き換えられるようになっているので、それはおいといて…。
記事の中でよく見られる言葉に
「自転車は有酸素運動だからやせる」
という表現があります。「有酸素運動」は、一般的に「体の中に酸素を採り入れながら、炭水化物・脂肪、あるいはタンパク質を分解・酸化させることで、長時間続けて行える運動」というような考え方をされています。
それに対し、「無酸素運動」は「クレアチンリン酸や炭水化物を無酸素で利用するが、前者はすぐになくなるし後者は疲労物質の乳酸を作るので、短時間しか続けられない」と表現されています。
ですが、これらの考えは限定的であり、多分に誤解を招く表現だと私は思っています。実際には「有酸素運動」でも酸素を使わない代謝は同時に進行しているし、「無酸素運動」でも酸素を使う代謝は同時進行をしているのです。さらに後者においては、運動中に補えなかった酸素を使って、乳酸を分解したりクレアチンリン酸や運動の直接のエネルギー源であるATPを合成しているわけですので、どこが「無酸素なのか」ということになりますよね。あくまで、運動を実施している最中に、酸素を使ってエネルギーを燃やす仕組みが「主体」なのか、それ以外の仕組みが「主体」なのかという話です。
さて、「有酸素運動だからやせる」という根拠ですが、一般的には、上記の「炭水化物・脂肪・あるいはタンパク質を分解」というところにあると考えます。つまり、逆に言えば無酸素運動では脂肪を燃やせない、ということになりますね。しかしながらこれらはあまりにも短絡的です。
以下は、有酸素運動と無酸素運動で同じだけのエネルギー量を使った、と仮定した場合の話です。
全体的に考えれば、私たちの脂肪細胞は常に脂肪を必要に応じて出し入れしていると考えられます。有酸素運動を行うと、エネルギー全体の半分程度は脂肪でまかなわれることになるでしょうが、その際には、脂肪細胞からの「出」が多くなることでしょう。無酸素運動では、脂肪をたくさん使えないため、脂肪細胞からの「出」は確かに少ないかもしれません。その肝臓や筋肉に蓄えられた炭水化物(グリコーゲン)がたくさん使われることになります。
しかし、食事からとったエネルギーを体内に蓄積するときには、無酸素運動の場合、失った炭水化物の合成に回ることが考えられます。何より、炭水化物は私たちの行動を支配する中枢の唯一のエネルギー源なのですから。その結果、脂肪細胞への「入」はその分少なくなることになります。逆に有酸素運動の場合は、無酸素運動ほどグリコーゲンの補充が必要ないわけですから、残りは脂肪細胞の「入」に回ることでしょう。運動中に使う栄養素が炭水化物でも脂肪でも、同じエネルギーを使えば基本的に脂肪による減量の結果は変わらない、ということですね。
それでも私が自転車で「やせよう」というのはなぜか?
それはすでに述べた通り、通勤・通学の「手段」として位置づけることで、続けるための条件が整うからなんです。
ICOでは何度も述べてきていることなんですが、体脂肪1kgには水分その他の不純物も含め、7000-8000kcalものエネルギーを保持しているとされています。純粋な脂肪分は約9000kcalにものぼります。
少なくとも、不純物を含んだ体脂肪を1kg落とすためには、1日に厚生労働省が進める300kcalのよけいな運動を行っても、最低23日はかかることになりますね。ですが、3ヶ月もそのような運動を続けられれば、体脂肪分を今より3kgも除去することができるわけです。たいてい減量が失敗するのはこの「継続」ができないことに問題があります。
ところで、自転車で今までよりもよけいに消費できるエネルギーって、どれくらいなんでしょうか?
時速20kmのサイクリングで、1分間あたりのエネルギー消費量は、30代の体重60kgの男性で6.2kcal、同じく体重50kgの女性で4.7kcalであるとされています。
わかりやすくするために、間をとって5kcalで計算すると、往復30分自転車に乗る人は、150kcal、1時間乗る人は300kcalとなります。私の場合平均で、90分程度乗りますから、450kcal程度消費していることになりそうです。私の場合、もう少し体重がありますし、信号などで止まっている間も全くよけいなエネルギーを使わないわけではないので、もう少し消費しているはずです。
さらに、自転車の場合、比較的スピードがでますので、浴びる風で体温を失いやすい運動であるといえます。体調を維持するために冬の間は保温の工夫も必要になりますが、逆に言えば体温を維持するためのエネルギー量も必要になります。私の場合、室内の固定自転車(エアロバイクなど)よりも本物の自転車のほうが遙かに効果が上がりますが、それにはそういう理由も隠されているのかもしれません。
ただ、明確な減量目的に向かって減量する場合、たとえば月に2kgの減量が必要だ、という場合には、自転車通勤だけで稼ぐのは結構大変なことになります。距離が近い人は遠回りをするなどの必要があったりしますが、それでは手段としての自転車が運動のための自転車になってしまいます。モチベーションが高い人の場合はそれもあり、ですが、本来は速く目的地に到着できるはずの手段がよけいに時間がかかる「行動」になってしまえば、それが少なからずストレスとなってしまう可能性も無視できません。
今回の企画では、食事の工夫も採り入れたプログラムを採用しようと考えています。